有明けの月、残月など古の時代から昼間の月には殆ど関心が無かったと思うほど、その呼び名は僅かです。
暗い夜道を照らしてくれない月には見向きもしなかったわけでは無く、コントラストが低く余り鑑賞的では無かったのではないかと思います。
そんな昼間の月ですが、これまで余り写真に撮りませんでした。
夜間の月の写真に対してノイズが多く時に見るに堪えないことが多いからです。
2023/05/01 に撮影した昼間の月の写真です。
月写真を始め天体写真の多くは従来から様々な画像処理を行いノイズを減らしたり大気の揺らぎによる不鮮明さをシャープにしたりと、よりリアルな写真とすることが行われています。
ところがそうした天体に特化した画像処理ソフトが不得意とするのが白昼の天体写真です。
天体写真は夜間に撮影するもので背景となる夜空は基本的に黒です。
しかし白昼の月の写真は背景が青空で白い月はコントラストが低く、ノイズと月面の地形との差が分かりにくく欠け際などは上手く処理することが出来ないことが多いです。
近年になって話題に上ることが多くなって来たAI(Artificial Intelligence: 人工知能)は、コンピュータサイエンスの一分野で、通常は人間の知能に関する処理をコンピュータシステムが学習して実行することの総称を言います。
グラフックプロセスにおけるAI技術の登場は画像処理の分野でも大きく変貌を遂げています。
通常のフォトレタッチソフトでもインスタグラムなどで映える写真にすることが格段にやりやすくなり多くの人の注目を浴びています。
こうした流れは天体写真の画像処理にも使われ始めていて大きな成果を上げ始めています。
先の写真もそうしたAIを利用した画像処理を行っています。
▲先ほどの写真の処理前の写真になります。
一見するとそれなりに撮れていますが拡大してみるとノイズが多く鮮明さに欠けていることが分かります。
▲未処理の写真の拡大部分です。
▲より詳しく見るために欠け際の部分を拡大した写真では、処理後の効果が良く分かります。
これが同じ写真とは思えないほどノイズが少なく鮮明な写真になっています。
コンピュータグラフィックスの世界でも急速に広がって行こうとしているAIは現在賛否が分かれています。
特にこれまでも問題とされてきたフォトコラージュの著作権問題に重複して、AIを用いた画像補填などにネット上の著作物を無断使用してしまうAIが増えていることです。
今日行った白昼の月の処理はノイズを軽減するためにAIを使用しましたが、写真の欠損部分や領域を広げた空白部分をAIによって画像補填などで描かせてしまうことが出来るのですが、補填する画像を人間のようにひらめきで描ける訳ではないので、手っ取り早く画像にマッチした風景写真等をもって来て合成してしまうのです。
AIがどこからか持って来た画像の出所がネット上の他者の著作物であることが多く無秩序に利用されていることが問題視されています。
今日行ったノイズ軽減のAI処理では他の画像を用いて補完しているわけで無いことは確認していますが、AIを用いる際には他者の著作権を侵害していないか機能を確認する必要があります。
また、ネットに公開されたセンセーショナルな写真はSNSなどを通じて広く世界に伝わりますが、実際にはCGによって作られたねつ造写真であったというのはよく聞く話です。
こうしたねつ造画像がAIを用いることでほんの数クリックで簡単に作れるようになれば、真実をもみ消してしまうどころか何もかもがねつ造写真になってしまう恐れがあります。
最後は少し難しい話になってしまいましたが、AIという素晴らしい技術を正しく用いて写真からノイズを減らすことが出来るのは大変ありがたいことです。
この技術がこの先間違った使い方がされないように願って止みません。